南々瀬の放った言葉が引っかかって、反芻する。

聞き返したことで南々瀬は一度言葉を止めて、不安そうに俺の服を引き寄せた。



「キス、までは、してくれるけど……」



「………」



「そういう雰囲気、なくなっちゃった、から」



勘違いを重ねたことで不安になったわけか。

別に俺は南々瀬に飽きてもいないし、何ならそういう下心がなかったわけでもない。



そもそも、南々瀬が勘違いしてまだ数日。

……そんな数日気配がなくなっただけで不安にさせるほどがっついてねえぞ、俺。



割と理性的な方ではあるし、無理させたくねえからよっぽど感情に流されない限りは、2日続けて……なんてこともしない。

なのにどうして不安になる必要があったんだ。




「お前、ここ最近かなり疲れてるだろ」



「………」



「ただでさえ眠れてねえ人間を、

すこしでも寝かせてやりたいのは当たり前だろうが」



言えば、南々瀬がきょとんとする。

本気で俺に飽きられたとでも思っていたのか、その表情は驚きで染まっていた。



「じゃ、じゃあ……

その、べつに、飽きたとかじゃ……?」



「なんで飽きるんだよ。

お前もなかなか被害妄想が激しいな」



……それだけ感情を自由に抱けるようになった証拠ではあるが。

数日触れなかっただけで"飽きた"と勘違いされるこっちの身にもなれ。