ゆらゆらゆらゆら。
落ち着かない瞳は、睫毛を震わせて、南々瀬がまぶたを閉じたことで見えなくなる。
「このあいだ、見ちゃった、の」
「……見た?」
「先輩のスマホ、に……」
女の人から連絡あったでしょ?と。
言われて思い出すが、どうも一致しない。……俺のスマホに女からの連絡が入るのなんて、親かいくみぐらいだ。
「その内容が、その……」
ポケットに入れてあったスマホを取り出す。
それから画面を指で撫でる俺を横目に、言葉を濁す南々瀬。それを見て、ふとあることを思い出した。……ああ、そういうことか。
「お前が見たの、これだろ?」
言いながら開いたメッセージ画面の送信者は、『新見リナ』。
確かにこれだけなら、確実に女の名前だし。
「そう、これ……」
表示している内容も、『いつになったら彼女にあたしのこと紹介してくれるの?』だ。
……俺が悪かったな、これは。
「心配すんな。これ男だから」
「……"あたし"って言ってるんですけど」
訝るように俺を見る南々瀬。
確かに、名前だけでそんな判断はしそうにない南々瀬が、勘違いした理由はそこにある。



