ひとりになりたいっていう気分のときがあるのもわかってる。

特に、一緒に暮らしている分それも難しくなっているのは事実だ。……ただ、こういう時にひとりにしておくとロクなことがない。



生憎ブラコンな姉貴がいるだけあって、そのあたりに関しては理解していた。

実際、「ひとりにして」なんて言い出したいくみを放っておいて、解決した試しがない。



「ん。熱くはねえと思うけど、火傷するなよ」



「……ありがとう」



はちみつを混ぜたホットミルクの入ったカップを手渡せば、静かにそれに口をつける南々瀬。

美味しい、と、その表情がわずかに綻んだのを見て、すこしだけ安心した。



「、」



無言で額にくちづけを落とせば、南々瀬が俺を見る。

淡く揺らめいた瞳に涙こそ残っていないものの、ひどく曖昧な色だった。




「何が不安だ?」



「っ……」



何かあるってことは、とっくにわかってる。

南々瀬が転校してきて以来、何のために一番近くで想ってきたのか。



「素直に言えば良い。

……ぜんぶ聞いてやるから、な?」



南々瀬が不安な時にそばにいてやれないのなら。

泣いてる時に抱きしめてやれないなら。



「わ、たし……」



──変わらず、想ってきた意味がない。