「ホットミルク、飲みたい……」



「ん」



そっと南々瀬を腕に抱えて、シンと静まり返ったリビングに連れていく。

そこでようやく今日が歓迎会だったことを思い出したらしい南々瀬は、「みんなは?」と首を傾げた。



「夕帆の家。夜中まで騒ぐんだと。

南々瀬が寝たから、起こさねえようにって移動した」



「気遣ってくれたのよね。

……あ、いつみ先輩も行ってきたら?」



「泣いてるお前を置いて行くわけないだろ」



本当に騒いでいるかは、定かではない。

起きてはいるだろうが、色々と俺が余計な不安を与えたせいで、静かに話をしている可能性もある。




「もう泣かないから、平気、よ?」



リビングのソファに南々瀬を下ろせば、そんなことを言い出して。

思わず眉間を寄せた。……どうにも、今そばにいてほしくない、という意思表示に見える。



「いい。俺がいたら夕帆が嫌がるだろうしな」



「仲良いくせによく言う……」



さらりと髪を撫でて、キッチンに足を踏み入れる。

マグカップに牛乳を入れて電子レンジで温めている間、どうせならと自分のコーヒーを淹れて。



「砂糖と蜂蜜、どっちがいい?」



静かなリビングに声を投げれば、「はちみつ」と消え入りそうな声でかえってくる。

……行く気は当然なかったが、そんな弱々しい声を出すくせに、どうしてひとりになりたがるのか。