「たとえば、だよ?
この話って、公にはなってないんでしょ?それなら、いっそ"そういう計画"が行われていたことを、公にしてしまうっていうのはどうなの?」
「……まあ、理にはかなってるけど。
それだと、南々先輩のご両親がわざわざ取りやめた実験を、再開せざるを得なくなるよ」
「ルノくん……どういうこと?」
「"そういう計画"があったことを公にすれば、その話は当然世界に広がる。
何も無いように装いながら、裏でコソコソやってたのを、わざわざ世界に発信するってこと」
「あ、」
「"万が一"どころか。
それを標準値として使わなきゃいけなくなる」
裏で行われていたことが公になれば、世界は当然この国を敵視するわけで。
最悪の場合争いが起こる可能性だってある。だから、容易には口に出せない機密事項だった。
「それに、ウチもいつみ先輩の家もお互い世界に進出してるでしょ?
争いが起らなくとも、そういう話があったってだけで、今後手を結ぶのが難しくなることだってあるからね」
「うん。とくに、ぼくら八王子と、珠王は。
その計画をしらされていなかったにしても、計画に便乗してたのは事実、だから」
手詰まり、だ。
俺らには、どっちも捨てられない。
「……でもいま一番苦しいのは、
間違いなくいつみの立ち位置だろ」
莉央のその発言で、空気が薄くなったんじゃないかと錯覚するくらい息苦しくなる。
その通りだ。
何度考えたって、"あのとき"いっちゃんにしか、あの子は救えなかったはずなのに。
「珠王を継ぐ身で、それなのにその前から政界を敵に回すような行動取って。
……挙句に、守るためにリミットが近い中で南々瀬に結婚迫るしかねえんだから」



