籍って……マジか。

え? 南々ちゃん来年になったら結婚すんの?



「本気かよ……」



どうしようもない、という顔をしている夕さん。

仲が良いから知っているのかと思いきや、この件については夕さんも知らなかったらしい。



「籍を入れてしまえば、珠王の人間だからな。

俺が跡継ぎだってこともあって、南々瀬の身の安全は保障される」



「……ななせは、知ってるの?」



「いや、まだ言ってねえよ。

だからさっきの話は、あくまで"はやくて"1年だ。あいつがその段階で結婚したくねえなら、そのときは別の策であいつを守ってやる」



崖っぷちな作戦だなと思う。

正直、素人である俺から見れば。




「いますぐ結婚するって手は?」



それが一番安全な気がする。

身の安全がすこしでもはやく保障されるなら、世間の目なんかは多少気にすることになるかもしれねえけど。安全に越したことはない。



そしてそれも、いっちゃんは考えなかったわけじゃなかったんだろう。

めずらしく、困ったように、目を細めて。



「……日が浅すぎるんだよ。

あいつが、やっと15年分の重圧から解放されて」



「、」



「まだ半年も経ってねえのに。

……身の安全のために結婚しろだなんて、言えねえだろ」



どうして。

どうして。……あの子がそんな酷な運命ばかりを背負わなきゃいけないっていうんだ。