出来上がった朝食をそれぞれお皿に取り分けて、トレーの上に乗せる。
二人分の朝食を四人掛けのダイニングテーブルに運ぶと、彼は無言でパソコンを閉じてその上にミントグリーンの封筒を乗せ、隣の椅子の上に置いた。
「普通のお誘いだと思ってればいいの?」
「あー……一緒に晩飯食わねえかって誘いだ。
まあでも多少は、婚約だか結婚だかの話は出るだろうな」
左手薬指に嵌められた、宝石の光る指輪。
婚約指輪だって彼が言って渡してくれたそれは、渡されたあの日から肌身離さず持っている。
とはいえ劣化してしまうといけないから、お風呂や洗い物のときには外すようにしているけれど。
たった今まで料理をするために外していたそれは、再びわたしの薬指にある。
「お前はまだ高校生だしな。
親と俺らじゃ価値観が違う。そこは話し合わねえ限りどうしようもないだろ」
そうね、と納得しながら席につく。
両親が実行しようとしていた計画のことを考えると、わたしの両親はきっと、いつでもお嫁に行ってくれと思ってるだろうけど。
いつみ先輩のご両親の意見は、聞いてみなきゃわからないし。
お誘いに応える旨を伝えると、彼は手を伸ばしてふわふわとわたしの頭を撫でた。
「『行く』って返事しとく」
「はぁい」
それ以上何かあるわけでもないので、深く考えずに返事すれば、話は終わり。
「いただきます」を言い合ってから、先にお箸をつけた彼をじっと見つめれば。
「……毎回そんな不安そうな顔しなくても、
いつも美味いって言ってるだろ?」
おかずを一口食べてから、ふっと笑みをこぼした彼にそう窘められる。
……うん、そうなんだけど。
その小皿の中身は作り置きしてある分だから、食べてもらうのも初めてな料理なわけじゃないんだけど。
なんていうか、いまだに反応が気になってしまう。



