いつものように言い合いを始めようとするふたりを止めれば、ふたりから感じる「解せない」というオーラ。
……いや、なんでお互いに「自分は悪くない」みたいな顔してるんですか。
「南々瀬ちゃん、
スルースキルが段々上がってきてる」
「……拾ったら面倒になるって学んだんですよ」
出来上がったコーヒーを、いつみ先輩に手渡す。
夕帆先輩にもおかわりいりますか?と問うてみたけど、彼は「ううん」と首を横に振った。
「……いつみ先輩」
「ん?」
彼の視線が、わたしに向けられる。
どことなく瞳に疲れが滲んでいるような気がして、無意識に眉間が寄った。
「お昼、デリバリーで頼もうって話してて……
そのときになったら呼ぶから、それまですこし休んできたほうがいいんじゃない?」
今日も朝から仕事のことで呼び出されて、疲れていないワケがない。
ただでさえ睡眠を取らないんだから、せめて休息だけでも取ってもらわないと。
「別に、」
「別に、じゃない。
無理してたら、絶対いつか倒れちゃうから。ね?」
心配なの、と。
言ったのが効いたのか、「わかった」と返事してくれた先輩を部屋に強制送還する。夕帆先輩が話し相手になろうかと言っていたけど、案の定断られていた。
「んじゃあ、昼になったら俺のことも呼んで」
楽しむだけ楽しんで、一度階下にある自分の部屋に戻っていった夕帆先輩。
そのため、リビングには必然的に現在の生徒会役員だけが取り残されるようなかたちになって。



