「さすが。
南々瀬ちゃんならいいお嫁さんになれるな」
「……夕帆先輩、
わたしのこと揶揄うの好きですよね」
歩み寄ってきて、キッチンカウンターに肘をつく夕帆先輩。
ニヤニヤと楽しげなその表情は、どこからどう見たってわたしを揶揄っているようにしか見えない。
「まさか。揶揄ってねえよ」
「どの口が言うんですか……」
「いやでも、本気でなれると思ってるけど。
……さっさといつみにもらわれな」
……"もらわれな"って。
そりゃあわたしだって、いつかはそうなればいいなぁとは、思うし。左手の薬指に嵌まる指輪の煌めきは、今日も褪せることがないけれど。
「余計なこと吹き込んでんじゃねえよ」
もどってきたいつみ先輩は、心底めんどくさそうな顔をしてそう言い放つ。
でもまあ、そこは生まれながらの幼なじみですよね。
「どこが余計?」
不機嫌な彼を物ともせず、言い返している夕帆先輩。
その度胸だけは分けて欲しい。わたしには不機嫌ないつみ先輩に言い返すなんて無理です夕帆先輩。
っていうか目に見えていつみ先輩の機嫌が悪い。
睡眠時間を日々自ら削っている彼が"眠い"と思うことは稀だから、疲れているか、純粋に機嫌が悪いかのどちらかだ。
「お前の言動すべてだよ」
「もう。
いつみ先輩も夕帆先輩も、顔をあわせるたびに口喧嘩するのやめてもらっていいですか?」



