ピッとカードを2枚場に置いてそう言ったのはルアで。
「はや」と口をそろえるみんなを余所に、手に取ったチョコレートをもくもくと食べていた。
ババ抜きって、人数が多いと自分の欲しいカードがなかなか回ってこなかったりするし。
逆に人数が少ないと、心理戦を強いられているような気分になる。
そういえばわたしは一回もジョーカーを見てないけど、誰が持っているんだろう。
なんて、そうこうしているうちに。
「あ、」
ガチャッと玄関の扉が開く音が聞こえた。
「いつみ先輩帰ってきたんじゃないですか?」
ルノの言葉に、「そうだと思う」と返して。
ルアがすでに上がってしまったから、手を伸ばして更にその隣にいるルノの手札から1枚引いたところで。
「ただいま」
リビングの扉が開いて、いつみ先輩が入ってきた。
ちょうど運良く手元のカードが揃ったから、「上がり」と告げて離脱する。立ち上がって振り返れば、いつみ先輩がわたしの頭をそっと撫でてくれた。
「荷物置いてくる」
「はぁい。コーヒー淹れとくね」
「ああ、頼んだ」
ぽんぽんと触れただけで離すと、彼は一度部屋へと向かう。
それを視線だけで見送ってから、キッチンに足を踏み入れた。
コーヒーを淹れるだけだから、エプロンはつけなくてもいいし。
いつものように食器棚から彼のカップを取り出して、コーヒーの準備をしていれば。



