「夕帆に口うるさく言われたわ。
ふたりで出掛けるのはいいけど、男に絡まれたりしないようにって」
「夕帆先輩もいくみさんのこと大好きですからね」
「でもわたしたち、そんな簡単に靡く女じゃないわよ、ってね」
いくみさんの言葉に思わず笑みをこぼしながら、地下で降りる。
部屋につき1台の駐車スペースがあって、夕帆先輩の部屋の駐車スペースにはいくみさんの車が停まっている。
……夕帆先輩が免許を持ってるのに車を持っていないのって、もしかしてこのためだったりするんだろうか。
まあ大学に行くのに車が必要ない距離だから、シンプルに要らないのかもしれないけど。
「南々瀬ちゃん、車の免許持ってるんだっけ?」
後部座席にバッグを置かせてもらい、助手席に乗り込む。
シートベルトを掛けながら言う彼女に、「持ってないですよ」と返した。
「でも、今年か来年には取りたいなと思ってて」
「あらそうなの?」
「はい。今仕事終わりに、いつみが迎えに来てくれたりするんですけど。
彼自身も疲れてるだろうから、できることは自分でしたいなと思って」
免許を取って車に乗れたら、それこそ大学や仕事場への移動も楽にできるし。
取っておくに越したことはないかな、とは思う。
……まあ、いまでも十分生活できるくらい便利なところに住んではいるけれど。
「いつみはそんなこと気にしてないと思うわよ。
かわいいお嫁さんに早く会いたくて迎えに行ってるんじゃない?」
エンジンをかけたいくみさんの言葉に、じわりと頬が赤くなる。
籍を入れて1ヶ月以上経ったけど、お嫁さんって言葉にまだ慣れない。



