笑顔で沈めにかかってくる椛。
とっさに「そんなわけないでしょ」と言ってしまったせいで、彼が口元の笑みを深めた。
「なら、いいじゃねえの」
どうすればそんな解釈になるのか。
仕事が忙しいからダメだって言ったんですけど。すごくもっともな理由だと思うんですけど。
「兄ちゃん……
あんまり南々先輩のこと揶揄っちゃだめだよ?」
「……揶揄ってねえけど?」
なんだか困ったような顔をして呉羽が諭してくれるけれど、それに対してもきょとんと首をかしげている椛。
どうも本気で言っているようだから、余計にタチが悪い。
集中したいのに出来なくて、仕方なく作業の手を止めた。
そのままソファに深く身を沈めた先で、不意に目があったのはブラウンがかった天然色のグレー。
「……ぼくも、ちょっと気になるなぁ」
「え」
「ん? ななせと、いつみのお家」
今日も独特のやわらかさは健在。
だけどどうもそれにそぐわないセリフを向けられて、表情を堅くするわたし。そんなわたしに念を押すように、ルアは甘く目を細めて。
「だめ……?」
ずるい……!わたしがその顔に弱いのわかってやってるでしょ!?と。
脳内でつらつらと文句を言えたとしても、わたしが実際に口に出せる言葉など一つ。
「先輩に……確認、しておくわ」



