ふっと、息をつく。
俺のためにも用意されていたオムライスは当たり前に美味しくて、優しい味が、どうも沁みる。……俺の彼女は、壊滅的に、料理できねえのに。
「………」
オムライスが好きだからって、一時期練習してたな。
……それも失敗に終わって、作るのを諦めてたけど。
何度も出来上がる失敗作を、味見と称して食べさせられたこともある。
残りのオムライスを食べ終え、その懐かしさに息を詰めた頃には、答えは出ていた。
「、」
スマホが、着信を知らせる。
俺らの仲で遠慮なく電話に出るのはいつものことだけど、思わず戸惑ったのはその相手が目の前にいる男の嫁だからで。
迷った末にいつみに画面を見せてから、電話に出た。
黙々とオムライスを食べるその姿に、特に動揺は見受けられない。
「どした? 南々瀬ちゃん」
『あ、あの、夕帆先輩。
……ちょっと助けて欲しいことがあるんですけど、』
「……助けて欲しいこと?」
なのにいつみじゃなくて俺?
仕事をしてるだとか用事があるとかなら別だけど、いつみは目の前で呑気に飯を食ってる。しかもオムライスを用意して行ったのなら、彼女はそれを知ってるはずで。
『いくみさんが、泥酔してて……
男の人に連れていかれそうなんですが……』
「は!?」
待て待て待て。
南々瀬ちゃんが出掛けた相手って、いくみかよ。



