「いくみ」



「んー……?」



「俺も酒飲む」



「あんたまだ一応未成年でしょ」



キッチンに行って、冷蔵庫を開ける。

常備された、いくみのための酒。……長年想ってきたから多少のわがままは聞くけど、何となく虫の居所が悪い日もある。



今日がたまたま、それだった。



仕事終わりに遊びに来たいって言うから、いくみのためにおつまみも適当に買って帰ってきて。

いまから向かうって連絡が来た時点で風呂のお湯もためて、帰ってきてすぐさま風呂にゆっくり浸かれるようにしてやった。




それは別に問題ない。

実際いくみは喜んでくれたし、仕事の疲れが抜けた顔で楽しそうにしてるのも、全然良いけど。



……もうちょっと構ってくれても、良くね?



「えっ、ちょっと。ほんとに飲んだの?」



プルタブを起こした音で気づいたいくみがこっちに歩いてきたけど、もう遅い。

缶を呷って、琥珀色の液体を飲み下す。



「別にいいじゃん、家で飲むぐらい」



「そうだけど……」



無理やりこうやって気を引いたって、別に嬉しくない。

せっかく付き合えたのに、未だになかなか時間が取れないことは、仕方ないことだってわかってる。……わかってるけどさ。