椛と莉央が、ふたりで顔を見合わせて頷き合う。
いつかは家庭を、とはたしかに思うけど、今は正直そんな余裕もない。
「結婚したら、また別で家を用意するのかうちのお母さんに聞かれたみたいよ。
……でもまあ、しばらくはここにいる予定なの」
いつみの大学も近いし、彼の右腕である夕帆先輩も同じマンションに住んでいるし。
もう卒業したから用事はないといえど、王学から近いところに住んでいれば、もしみんなに何かあったとしてもすぐ会える距離。
……まあ。
"万が一"なんてことは、起こらないで欲しいけど。
「そっかそっか。
んじゃあ、俺もたまに遊びに来るかな~」
「しゃあねーから、俺も来てやるよ」
ふたりの言葉に、思わずくすりと笑う。
何か特別なことがあるわけじゃないけれど、わたしたち3人の間には"同級生"という独特の距離感があって。
「……いつでも来て。歓迎するわ」
「いっちゃんは嫌がるだろうけどねえ」
「でも"しゃあねーな"って思いながら入れんだろ」
3人で顔を見合わせて笑うその時間も、愛おしい。
きっとこの感情は、わたしたちにしか共有できない。
「改めて結婚おめでとう、南々ちゃん」
「おめっとさん」
【小ネタ2 そういえば 】
SNSに『同級生』のグループトークがあるくらい、実は仲のいい3人。
3人とも基本常識人でトラブルを起こさないので、割と有益な情報を交換しがち。