余計にわからないんじゃ、と。
言おうとしたわたしの前で、彼は綺麗に口角を上げる。とびっきり綺麗な、表情で。
「お前ら、知ってるだろ?
広い土地があって、バラ園がある施設」
問われて、考える。
広い土地があって、バラ園がある、施設。
それって。……それって、まさか。
「王、学……?」
校舎にラボにドームまであるのに余裕の広さを誇る巨大な学園。
理事長がバラの手入れをしているらしい、女子生徒たちに人気のバラ園。
──わたしたちが、時を経て、出会った場所。
「ああ。……もともと寂れた場所だったらしい。
だから八王子がその土地を買収して、王学を建設した。その際に、バラ園は残したみたいだな」
「そんな、こと、ある……?」
確かに王学は歴史が極端に浅い。
それを思わせないほどに人気のある学園で、最先端を進んでいるけれど。……そんな、の。
「俺はあの時セレモニーで南々瀬にプロポーズした。
……南々瀬、二度目のプロポーズはどこだった?」
「王学の、ドーム……」
……うそみたいな、話だけど。
わたしたちの、はじまりの、場所は。
「ああ、そうだ。
俺らは何回も同じ場所で出会ってる」



