「いつみ」



先に寝室に移動した彼を追うようにして寝室に入れば、小窓からはわずかな月明かり。

ベッドに腰掛けていた彼はスマホから視線を上げると、ゆるく目を細める。



「どうした?」



ぱたぱたと歩み寄って、背中に腕を回す。

顔を覗き込んでくる彼と目があうのが恥ずかしくて、胸に顔をうずめてから「あのね」と口を開いた。



「……いつみのすきなようにして、いいよ」



「、」



くぐもった声。

それでもはっきり聞こえたようで、いつみがスマホを置いたのがわかる。彼の指が耳や頬に触れただけで、ばかみたいに熱くなった。




「……最近、素直だな」



落とされた声は、静かな部屋に響く。

そろりと顔を上げれば触れるだけのくちづけを落とされて、繰り返されるうちに、深くなる。



自分から別れようとしておいてなんだけど、やっぱりわたしは、この人しか見えない。

伸ばしていた腕を曲げることで彼との距離を自分から縮めると、いつみが煩わしそうにメガネを外した。



「先に謝っとく。

……優しくしてやれなかったら、ごめんな」



「っ、」



照明を落として、彼がわたしに触れる。

いつもより強引にされて、隠れなさそうなところにまでキスマークを残されて、そこでようやくとあることに気づいた。



本当に、彼の気持ちをなめていたわけじゃない。

でも。……いつみも、不安、だった?