「……なに。
散々俺のことは呼んでくれなかったくせに、この人は一人暮らしの家に呼んだわけ?」
ずいっと。遠慮なく椛を指差す夕陽。
人を指差すのはやめなさいね。そんなことは気にもとめていないのか、椛はケラケラとのんきに笑っているけれど。
それどころか「夕ちゃん嫉妬〜?」と揶揄ってるし。
……基本的にみんなが誰かを煽ろうとするから、ついつい喧嘩になるんじゃないだろうか。
「誕生日にサプライズでみんな来てくれたのよ。
だから椛だけ入れたわけじゃないの」
まあ、いつみ先輩だけはひとりで訪れたことがあるけれど。
あの日がなかったら、わたしは今ここにいなかったと思う。
「へえ。
……でも俺は、結構根に持つよ?」
にこり。
ファンに人気の『NANAスマイル』を見せてくれるものの、目はまったく笑っていない。あと、それは笑顔で言うセリフじゃない。
「……そろそろ仕事しようかな」
でも、ダテにわたしも夕陽の元カノポジションにいるわけじゃないし。
軽くあしらって仕事しようとしたら、夕陽がすっとソファから立ち上がった。
それでもなおスルーして、電話がかかってくる前に起動させてあったパソコンを開く。
大まかな年間スケジュールを確認するため、夕陽から意識を逸らそうと決めた瞬間。
「だめ。逃がさない」
「っ、」
すぐそばまで歩み寄ってきた夕陽が、わたしの目線に合わせて屈む。
あまりにも甘い声色に息を詰めたわたしに、満足そうに口角を上げた彼は。
「ナナさぁ、」



