「いつみが帰ってくんの、待っといてやろう」



「、」



「帰ってこなかったら殺すって脅しといたから」



ぎゅっと、彼女が俺の服を握る。

肯定を示すそれにほっと肩の力を抜いて、彼女を泣き止ませる。それから「南々瀬ちゃん」と彼女を呼ぶと、その左手を掬うように持ち上げた。



「これだとまるで、

俺と南々瀬ちゃんが結婚するみたいだけど、」



するりと、薬指に嵌められた指輪を抜き取る。

そして、代わりにテーブルに置かれていた彼女の指輪を嵌めれば、南々瀬ちゃんはふわりと笑ってくれた。



……やっぱ南々瀬ちゃんには、そっちの指輪の方が似合う。

ウザいくらいの愛が込められた、いつみからの指輪。……ロイヤル部の、お姫様の、象徴。




「柴崎のこと呼んでいい?」



「はい。……電話、しますね」



南々瀬ちゃんがスマホを取り出して、柴崎に連絡する。

その数分後に部屋に上がってきた柴崎は、「そんなことだろうと思った」なんてつぶやいていて。



「……言っとくけど。

簡単に逃がしてくれるような相手じゃないよ」



我が物顔でソファに腰掛けながら、そんなことを言う。

……でもそれは、南々瀬ちゃんといつみが誰よりも理解してる。



「とりあえず、

あいつらにお前ら保護したって連絡しとくから」



だけど、例え、そうだとしても。

……いつみは南々瀬ちゃんのためなら、なんだってやってみせるから。