ぐらりと、脳が揺れる。
無意識に泣きそうになって、涙がじわりと滲むのがわかったけれど、零したりはしなかった。
「じゃあ、まさか、」
「いたんだよ、僕も。
……15年前の、あのセレモニーの場に」
「っ……」
「はじめて僕と南々瀬が出会ったのはニューヨークじゃない。
15年前の日本だ。……だから僕ちゃんと言ったよ、ニューヨークで、南々瀬に運命だって」
言われた。それは覚えてる。
でもそれは茉文の都合の良い発言なんだって、彼の今はもうすっかり聞き慣れたジョークだって、そう思ってたのに。本当は。……違った、の?
「どうして今回、異国交流が実行されたのか教えてあげようか。
ひとつは純粋な異国交流。……でもその裏にね」
するりと、彼がわたしの左手を握る。
「日本の政府が絡んでるんだよ」
「え、」
「きみはハッピーエンドを選べない。
……だってきみがそれを選ぼうとすると、間違いなく事はすべてバッドエンドに動くからだ」
親切さを全面に出すかのように、優しく笑った茉文。
でも笑っていない瞳。彼はわたしの手を握ったまま、空いている方の手をポケットに忍ばせる。そして。
「僕と結婚しよう南々瀬。
……約束どおり、きみを迎えに来たんだよ」
真新しい輝きを放つリングを、わたしに差し出した。



