好かれちゃったんだろう、と。
うなだれていたら、莉央が「お前さ」とわたしを見る。臙脂色の髪は今日も綺麗で、やっぱり彼によく似合っていた。
「あいつの顔は好みだろ」
「……なぜ」
「お前ああいう中性的なの好きっぽいなって」
夕陽もそうだろ、と言われて押し黙る。
……たしかに茉文は、あの性格じゃなければ、顔だけはわたしの好みだ。むしろ今まで出会った人の中で、最も好みの顔は茉文だと言い切れる。
ぜったい本人には言わないけど。
だって言ったらまた運命だとか言い出すだろうし、間違いなく調子に乗るだろうし。
あとひとつ、重要な問題がある。
「ん〜?
でもそれだといっちゃん当てはまらなくねえ?」
その通り。
中性的からは程遠く、どちらかといえば男っぽい顔であるいつみが当てはまらなくなってしまうから、言わないだけ。
だってまさか本人の前で、顔は夕陽の方が好きだなんて言えないでしょう?
もし逆の立場だったら、普通にショックだし。
「てか本当にあんな面倒なのがくるわけ?
異国交流って、今日から金曜までなんでしょ?」
「ここに引きこもるつもりだったのに……」
犯罪じみた手法で簡単に入ってくるんだから、もはや対処法がない。
5日間学校休んじゃだめかなとふつふつ考えていれば、目が合った先で呉羽が小さく笑う。
「ちょっと変わった人かもしれないけど、大丈夫だと思うよ。
好かれてるんだから、嫌なことはしないだろうし……」



