……うん、いつみならそう言うと思ってたけど。
でも和食の気分じゃないって言われたらショックだし。
「そういえば、南々瀬。
ここ最近、何か変わったこととかないか?」
「変わったこと?」
キッチンに入ってきて、冷蔵庫からお茶の入ったペットボトルを取り出すいつみ。
グラスに注ぎながら言われて日常を思い返すけれど、特に何か変わったことはないはず。
「もし何かあったら、ちゃんと言えよ。
ただでさえ色々あって、お前の立場は危ういしな」
「ふふ、大丈夫よ。ありがとう」
それについては、わたしも理解してる。
だけど誰かが干渉してくるような気配もないし、ごくごく平和な日常だ。──わたしが何よりも、望んでいたもの。
両親と一緒に、という夢は叶わなかったけれど。
それでも以前に比べれば、とてもしあわせ。
好きな人がわたしを好きだと言ってくれて、そんな彼とずっと一緒に過ごせて。
これ以上ないくらいにしあわせだって、思う。
「ふふっ、デート楽しみ」
しあわせすぎて、浮かれたことを言ってしまうけれど。
いつみは口元に優しい笑みを敷いて、「そうだな」って言ってくれる。
……ああ、もう。
そんな顔されたら、もっともっとすきになる。
「みさとと昨日買い物して、新しいお洋服買ったの。
せっかくだから、今日新しいの着るね」
頭を撫でてくれる彼に、笑って告げる。
ご機嫌なわたしに「楽しみにしてる」といつみが言ってくれたから、今日は頑張っておしゃれしようと単純なことを思った。