……とは、言われたものの。



「社長って……」



いきなりわたしにできるものなんだろうか。

珠王は医療機関だからどうこう比べられるものではないけれど、いつみは昔から努力してきたからこそすでに仕事をしているわけで。



「おはよ、ナナ」



「……夕陽。おはよう」



校門前まで彼女に送ってもらって、学校に入るとばったり夕陽と会った。

彼は一瞬不思議そうに首をかしげて、「なんかあった?」と聞いてくる。



"『Fate7』がCDを出してるレコード会社が赤字スレスレなの"と。

彼女が言ったことを思い出して、なんとなく夕陽の顔を見られなかった。




「なんでもない。

『Fate7』って、また近いうちにCD出したりするの?」



「ん? ああ……

まだ情報解禁されてないから内緒だけど、リーダーにCMの話が1本来てて、そのCMソングが俺らのになるって話だよ」



生徒会棟に入ってから、こそっと教えてくれる夕陽。

話しぶりからして、どうもレコード会社のことは知らなさそうだ。



「なに、俺らの新曲聴きたくなった?」



「……結構好きなのよ、『Fate7』の曲」



「それならよかった。

新曲出来上がったら、ナナに聴かせてあげる」



艶やかに笑う夕陽に「ありがとう」とだけ答える。

リビングに足を踏み入れれば、早くもみんな揃っていた。