「菜乃花ー!どこだー?」 お兄ちゃんの声がした。 声がしたその一瞬だけ、涙が引っ込んだような気がした。 「うえええええん!」 けれどもやっぱり涙は止まらない。 お兄ちゃん、助けて。 その時だった。 目の前の草が揺れるとともに足音が聞こえてきた。 「うっ、うっ、だ、誰…?」 鳥肌が立つ。 寒気で体が動かない。 ガサッガサッ。 草むらの揺れはどんどん大きくなり、『何者』かが目の前に現れようとしていた。