幸汰の隣の男子と目が合った。


呼吸が、うまくできない。



……あぁ、“彼”だ。




右耳に付いている2つのピアス。


澄んだ漆黒の瞳。


シャンデリアの光に照らされて濃い青色が浮かぶ、瞳と同じ黒色に染まった短髪。



クールな雰囲気が漂う、愛想のない整った顔をした“彼”が、一段ずつ階段を下りてくる。


あたしは待ちきれずに、“彼”の元へ駆け寄った。




10年間、ずっと待っていた。


待って、待って、待って。

待ち焦がれていた。


“彼”に会える、この瞬間を。




やっと会えたね。



「お兄ちゃーん!!」




涙ぐんだ声で大きく、“彼”――お兄ちゃんを呼びながら、ちょうど階段を下りきったお兄ちゃんに抱きついた。