番犬男子





稜という男子の、濃い褐色に彩られた右目が、おもむろにあたしを捉えた。



けれど、



「あら?」


声を発したのは、稜という男子ではなく、あたしの背後にいた人だった。



あたしは反射的に振り返る。




「その可愛らしいお嬢さんは、どなた?」




稜という男子の言葉を代弁するかのように、背後の人が女口調で話しかける。


顔を覗きこまれ、つい固まってしまった。



この人……男子、だよね?




大人な女性かと勘違いしてしまいそうになったほど、中性的な美形。


細くタレた、こげ茶色の目。


前髪をセンターで分けている、ミルクティー色のサラサラした髪。



口元の右下にあるほくろも、ピアスホールの空いていない耳に髪をかける仕草も、ミルクティー色の髪の男子独特のお上品な話し方さえも全て、色っぽく感じた。