番犬男子






『だから、隠した。相手の心がこれ以上傷つかないように』


『あたしも、幼なじみの子と同じ、かな。あたしのせいだって、辛くなる』


『あたしのせいで、負った傷なの』


『お兄ちゃんを、もう、傷つけたくないの』




どんな想いで、悲痛を隠しながら、そう告げたのか。


何も……本当に何ひとつ、知らなかったんだ。





守りたい。

そう確信したときには、既に、あいつは傷ついていた。






灰をかぶったような前髪と、ただの壁と化した丸メガネ。


必死に覆った左目は、モノクロで。



何も見えないはずなのに、あいつの傷“痕”だけは鮮明に映った気がした。




そのとき、もし。




『もっと綺麗で鮮やかな、情熱の色だよ』




あの日、あいつが言ってくれたみたいに。


恥ずかしくても、不器用でも、かっこ悪くても。



「綺麗だよ」



俺も、そう、伝えられていたら。


そしたら――。






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