番犬男子





耳たぶに付けている、小さな宝石が施されたピアスを、指先できゅっと握り締めた。


ジャラリと揺れて、名前も知らない赤い宝石が綺麗に光る。



これは、母さんの形見。



これを身につけていると、不思議と勇気が湧いてくる。


母さんが背中を押してくれているのだろうか。だったら、いいな。




「どうやって呼び出しますか?」


「たぶん、明日もあいつ来るだろうな、ここに」


「ここに来るんなら、繁華街を通ってくると思うぜ!」


「なんで?」


「ここ目指して向かう途中、繁華街近くの道にいたから」


「ふーん」




相変わらず、無機質な返しだな。

質問してきたのはそっちのくせに。


まあ、それが稜らしいっちゃらしいんだけど。



「なら、私が繁華街で待ち伏せしてるわ」


「え?雪乃さんだけでですか?」



不安そうにする幸汰に、柔らかく微笑む。




「大丈夫よ。たまり場に案内するのを装って、呼び出し場所に連れていくから」


「で、でも!」


「それに、何人もいたら警戒されちゃうかもしれないでしょう?」


「……そうですけど……」


「ちゃんとうまくやるから、任せて?」