心なしか、顔が、白い。
雪が溶けて透明になった、あの色みたいだ。
「じゃあ、また明日」
――バタン。
扉が閉まると同時に、幹部室内はシーンと静まり返った。
空席となった赤のソファーに、みんなの視線が集まる。
そこにおもむろに座った幸汰が、沈黙を破った。
「あんな総長、初めて見ました」
開口一番の声は、ダージリンティーの香りにむせたみたいな、憂いだらけ。
「やっぱり元気なかった原因って、あの子、よね……」
「だな」
一言同意した稜は、黒のソファーを独占しつつ、スマホで先ほどの風都千果の検索結果を眺めていた。
自称、侍の妹。
コンビニ強盗も、あっという間に片づけちまったし、俺の出番なかったし。よくわからねぇけど、なんか、すげぇやつ。
コンビニで会った時は、まさか、誠一郎と同じ苗字で、自分が妹だと名乗るとは思わなかったけど。
「何なんだろうな、あいつ」
想像以上の低音が落ちた。



