番犬男子





バクバク騒いでいる鼓動を抑えながら、無自覚な上目遣いで幸汰のほうを見た。


幸汰は何が起きたのか把握できていない状態で、体全体を火照らせていた。



「ひゅ~」


「青春だねぇ」


「もっとやれー!」



幸汰の背後ではやし立ててるみんなにも、幸汰は気づいていない。




「あ、あた、あたしも……っ」



どもった声で、幸汰の意識がやっと戻ってきた。


ひと呼吸置いて、あたしは顔を上げる。




「あ、あたしも、幸汰のこと、だ、大好きだよ!」




お兄ちゃんへの愛情とは、ちょっと違う。


仲間への信頼とも、似ていない。




幸汰に抱く、複雑で不安定で扱いにくい、この淡い想いに名前を付けるとするならば。



きっと、恋。