番犬男子





幸汰と雪乃と遊馬と稜は、ただただ静寂を纏っていた。


まるで、あたしとお兄ちゃんの時間を邪魔しないように。




「お兄ちゃん」



もう一度呼んでも、お兄ちゃんは何も言わずに抱きしめるばかり。


お兄ちゃんの手は、少し汗ばんでいた。



しばらくしてようやく、お兄ちゃんが囁いた。




「千果」


「なに?」


「千果」


「どうしたの?」


「……千果」


「お兄ちゃん?」




夏休みにあたしが誘拐された日、お兄ちゃんとバイクでした会話を想起して、懐かしむ。


あの時と逆だね。