番犬男子





すると、幸汰はあたしに寄って、片膝をついた。



「幸汰?何す……」



何するつもり?、と聞き終える前に。


幸汰の指先が、あたしの裂かれた服の隙間を縫って入ってきた。



“あの日”の手術で、背中の皮膚が人より薄くなったせいか、未だに鮮血が流れている切り傷を、幸汰の指にスルリとなぞられる。



「ひゃっ!?」


い、いきなり何!?



こそばゆさを我慢していたら。


チュ、とリップ音を立てて、背中に直接柔らかな感触が触れた。



え?

今、傷痕にキス、された?


顔がみるみるうちに赤くなっていくのがわかる。



すぐに、ズタボロの傷痕から唇が離れた。



「な、なな、何して……!?」


「うん」



パニックになるあたしをスルーして、自分の考えを確認したといわんばかりに頷いた幸汰は、穏やかに微笑んだ。



「やっぱり、綺麗だよ」