番犬男子





幸汰に同情されているのだろうか。


いや、違う。



幸汰も、知っているんだ。


お兄ちゃんを……侍を想って行動し、自分がバッドエンドを招いた時の苦痛を。




「醜くなんて、ない」



つっかえつっかえに否定を繰り返され、あたしは黙って頭を左右に振り、さらなる否定を重ねる。


醜いよ。

お兄ちゃんを追い込んだ、この傷痕が、憎い。




『また総長を傷つけたら、絶対許さねぇから』


かつての牽制が、脳裏を過る。



あの脅しを悔いて詫びるみたいに、幸汰の唇だけが「ごめんね」の4文字をかたどった。



「千果さんも傷ついていたのに、あんなこと言ってごめん」



幸汰のか細い呟きは、あたしの元に届く前に、泡になって割れてしまった。