番犬男子





天才なあたしが、才能を潰してしまわぬように過保護になって。


お兄ちゃんに素っ気なくなってしまっていても、お兄ちゃんのことを愛していないわけなかったのに。



親も息子もお互いに、ただただ、愛情表現が不器用すぎただけなんだ。




お母さんもお父さんも、あたし自身も、気づいたら泣いていた。


その涙は、紛れもなく、お兄ちゃんを想っての涙だった。




……ごめん、お兄ちゃん。


こんな必死に諭されちゃったら、あたし、会いに行けないや。



『わかった。今は、行かない』



でも、と続ける。



『条件をつけてもいい?』


『条件?』



涙を指で拭って、天井を仰ぐ。



本当は、今すぐにでもお兄ちゃんに会いたい。


だけど、今会っても、あたしたちのためにならない。



あたしたちに必要なのは、時間だ。