番犬男子





会いに行っちゃいけないのは、お兄ちゃんのため?

どうして?



錯乱状態で思考が機能しにくい中、暴れさせていた体を鎮める。



その時ようやく、あたしの視界はお父さんとお母さんの表情を捉えた。


2人とも、後悔をにじませた表情を、ぐにゃりと不格好に歪めていた。




『仮に会いに行ってすぐ記憶が戻っても、父さんたちはきっと……いや絶対、同じ失敗を繰り返して、誠一郎を傷つけるだろう』



お父さんの、言う通りだ。



元凶はあたしだけれど、根本的な解決には、お父さんとお母さんも変わらなくてはならない。


それに、兄妹の関係よりもこじれすぎた親子の関係は、そう簡単に修復はできない。




『お母さんたちだって、千果と同じで、誠一郎を傷つけたくはないの』


『だからこそ、今は距離を置かなければならないんだ』



今まで散々悲しい思いをさせてきたお兄ちゃんに対して、親としてどう接すればいいのか。


わからなくなって、不安なんだろう。