そうだ。
ペンションが見えたところで大人の声が聞こえて、俺は安心して気絶してしまったんだ。
看護師さんは、続けて、俺の怪我の状態を丁寧に説明してくれた。
『右腕は骨折していて、額には切り傷があったから、誠一郎くんが眠ってる間に治療しておいたわ』
雪崩に含まれていた木で切ったと思しき、額の傷は痕になって残るかもしれない。
そう言われても、別段ショックはなく、むしろこのくらいの傷で済んでよかった。
それよりも、千果は?
父さんも母さんもどこにいるんだ?
『でも、本当に危ないところだったのよ?誠一郎くんは奇跡的に軽傷だったけど……』
『けど?』
嫌な予感しかしなかった。
『妹さんは――』
話を聞いて居ても立っても居られなくなった俺は、看護師さんの制止を振り切って、ベッドを下りて病室を飛び出した。
おぼつかない足で、廊下を走っていく。



