番犬男子






どのくらい歩いたのか定かではない。



ようやくペンションの影が見えてきた。


あと、ちょっとだ。



『おい、いたぞ!』



ペンションのある方向から、男性の声がした。


父さんと母さんが、行方不明の息子と娘の捜索を頼んだ、救助隊の大人たちだった。



俺はそうとは知らなかったが、俺たちを助けようとしてくれてるのだけはなぜだか察した。



『千果、もう大丈夫だ』



千果の寝息が、耳をくすぐる。


千果も、生きてる。



一緒に帰れるとわかった途端、緊張の糸が切れて、意識が遠ざかっていく。


膝から崩れるようにして、雪の積もった地面に倒れた。





そして、救助隊に助けられた俺と千果は、すぐさま病院に運ばれた。


知らせを受けた父さんと母さんは、急いで病院に駆けつけた。




俺はそこで、悲惨な事実を目の当たりにすることになる。