番犬男子





俺は意を決して、立ち上がった。


思った以上に力の入らない足で踏ん張りながら、寒さのあまり感覚がほとんどない体を支える。



雪崩では俺をかばってくれた千果を、今度は俺が助ける。



意識を失った千果を背負う。


ちょうど近くにあったリフトを道しるべに、ふらつきつつも歩き出した。



額から顔の横を流れた、生ぬるい血の気持ち悪い感触。


ひどく痛む、荒々しい衝撃。


一歩一歩が重く、呼吸が乱れる、過酷な現実。



何もかも俺を追い詰めて、残りわずかな力を吸い取っていく。




俺より千果のほうが、今、苦しんでる。


なのに俺が、簡単にあきらめていいはずねえ!



なんとしてでも生きて、帰るんだ。

千果と、一緒に。