番犬男子






『おに、ちゃ、だいじょ、ぶ?』


『俺は大丈夫だ。俺より千果が……!』


『なら、よかっ、た』



呂律が回っていない歯切れの悪い言葉で、俺の無事を喜ぶ千果を、怒ってやりたかった。



何がよかっただ。

ちっともよくねぇ。


千果が俺より重傷なのは明らかなのに、俺の心配してんじゃねぇよ。


自分の心配をしろよ、バカ。



だけど、言えなかった。


言えるはずもなかった。



俺のことを一番に想ってくれてる千果が、とても愛しくて、愛しくて。



『千……』


千果、と呼ぼうとして、途絶える。



千果の目が、再び閉じかかっていた。