番犬男子





頬を叩く手の指先が、かじかむ。


目頭が熱くなって、ひとつの涙が千果の瞼にこぼれ落ちた。



次の瞬間。



『ん……』



千果の目元が、少し、力んだ。


見間違いじゃ、ない、よな?



『……いっ、』



岩が当たった背中か、それとも全身か、苦しさに身を悶えた千果は、確かに今、息をしている。



生きてる。

千果は、生きてる。


神様、ありがとう。



ホッとして、涙がまたひとつ浮かんだ。


おぼろげにやや開いた瞼から覗く、ライトブラウンのつぶらな瞳で俺をなぞった。



『お、にいちゃ……?』



頷くしかできない俺に、千果は柔らかく笑った。