なんとか雪の中を脱出し、俺は上半身を起こした。
辺りは一面、銀世界。
ちらほら雪は降っているが、風はすっかり止んでいて、吹雪は落ち着いていた。
空を陰らせていた厚い雲もどこかへ流れて、今ではあんなに青々としている。
久し振りのように感じる太陽に目もくれず、千果に声をかけた。
『千果!』
額にピリッとした刺激が、声色をしおらせる。
鈍くなった動きを気にしないで、ぐったりとした千果を仰向けにして首元に左腕を回し、再び千果の名を叫ぶ。
『千果!!』
幾度となく呼んでも、何の反応も返ってこない。
も、もしかして、死……。
途中まで考えてしまった最悪な想像を、首をブンブン振り、否定してかき消した。



