番犬男子





体が妙に気だるくて、うっすらと目を開けると、周りは薄暗くて寒かった。


ここは……雪の中?



それでも、俺の上に乗っかっている、気絶した千果だけははっきり捉えられた。


ハッとして一気に目が冴える。



『千果、千果……!』



何度呼びかけても、応答はない。



どうしよう。

どうしたらいいんだ?


うろたえながら、とりあえず雪の中を出ようと、力を振り絞って両腕を手探りで動かした。



冷え切っていて感覚が麻痺していて、右腕は動かす度痛いが、今はそんなことどうだっていい。


千果を助けたくて、必死だった。




両腕を上げて、固い雪を押してどかすと、太陽の光が差し込んだ。



どうやら俺と千果は、崩れた雪の大分上の層で埋もれていたらしい。


不幸中の幸いってやつだ。



深いところだったら、俺だけじゃどうしようもできなかった。