番犬男子





涙腺が、緩む。



どうして。

どうして、なんだ。


『どうして、』



ポロッ、とあっけなく大粒の涙がこぼれた。



『千果は俺を心配してくれるの?』



兄らしさなど欠片もない、弱々しい問いかけを投げかける。


千果は一瞬キョトンとして、すぐ口元をほころばせた。




『お兄ちゃんのことが、大好きだからだよ』




それは、俺が欲しかった言葉。


その言葉をくれたのは、父さんでも母さんでもなく、妹だった。



妹は、俺を見放さず、愛してくれていた。


こんな俺を、ずっと。




『だから、お父さんとお母さんを置いて、勝手に追いかけてきちゃった』



涙を拭って、千果と合わせた目をよく凝らして、見いだす。


千果は急いで来てくれたようで、肩で呼吸をしていた。



必死にこらえていた涙が、またあふれて泣きそうになった。