番犬男子





雪山に入って数分すると、千果の予想通り、天気が荒れた。


激しい吹雪のせいで、前がよく見えない。



急に怖くなってきて引き返そうと振り返ったけど、跡は雪に埋もれて、どの道を通って来たのかわからなかった。



進むか、戻るか。

千果なら、どっちをすべきか即決できるんだろうな。


俺には、できない。



危険な雪山の中、俺はスキー板を外して、心細さのあまりその場にしゃがみこんだ。



『父さんと母さん、俺のこと探してくれてるかな……』



スキーを続ける俺を引き止めはしても、追いかけてくる気配はなかった。


結局、その程度なのだろうか。



嫌、だな。


ひとりぼっちは、嫌だ。



自業自得だと嘲笑う気力もなく、膝を抱える腕に額を置いて顔をうずめた。




『誰か、俺を見つけてよ』



父さん。

母さん。



俺を、愛してよ。