昼下がり、雪が降ってきた。
少しずつ、少しずつ、風と相まって雪が強くなる。
『今日はもうスキーはやめたほうがいいかも』
千果が雲行きの悪い空を眺めながら、深刻に呟いた。
その警告に、父さんと母さんは1ミリも疑わずに信用した。
『千果が言うならそうなんだろう』
『じゃあペンションに戻りましょうか』
『嫌だ!』
ペンションへ行こうとする父さんと母さんと千果を睨みながら、俺は反対した。
千果に従うなんてごめんだ。
反抗期は今でも継続中だったため、俺は何かと千果を敵視していた。
『誠一郎、わがまま言うな』
『俺は戻んねぇ!』
『千果が言っただろ?天気が悪くなるからスキーはおしまいにしよう、って』
『んなこと知らねぇし!』
父さんの顔が、険しくなる。
怒られるのなんかもう慣れっこだ。
だって、どうせ、父さんも母さんも千果の味方だろ?
俺は……独り、だろ。



