番犬男子







ある真冬の日。




冬休みを利用して、家族でスキー場に遊びに来ていた。



千果は一度経験すればほぼ何でもできる天才肌だったが、運動能力自体は意外にも平凡だった。


まあ、自分の力をきちんと把握した上で、自分が動きやすくなるコツを掴んでマスターしてしまうところが、天才と謳われる所以【ユエン】なんだろう。




俺は完全なる努力型で、しかも努力してるところをあんまり見られたくない、めんどくさい性格をしていた。


千果とは、正反対。




『兄妹なのに、こんなに違うのね』



母さんにとっては、何気ない一言だったのかもしれない。


けれど、俺には、深く突き刺さった。



妹はこんなにすごいのに、兄は良いところのない落ちこぼれで、親として恥ずかしい。


ただネガティブに変換してるだけだと頭ではわかっていても、そう言われてる気がしてならなかった。