そんな日々が、数年続いた。
毎日が窮屈で、不機嫌で。
妹なんか産まれなかったら。
俺が天才だったら。
両親が俺のことも見てくれていたら。
浅はかな理想を、思い描いていた。
何をやっても、愛情は偏ったまま。
千果を憎めば憎むほど、自分自身が嫌いになっていった。
俺の心は傷だらけで、弱かった。
俺が7歳になった頃、5歳の千果は天賦の才を十二分に開花していた。
小学生には絶対に書けないような漢字をすらすら書けたり、大学入試センター試験の問題をいとも簡単に解いたり、何か国もの外国語を習得したり。
「天才少女現る!」なんて見出しで各メディアから取材をされていたり、アメリカのなんちゃら学校っていう有名な教育機関から手紙が届いたりもしていた。
周りにちやほやされて期待されている千果は、俺とは別の世界にいるみたいな感覚だった。
なんの才能もないぶっきらぼうな俺を、どうして千果が未だに懐いてくれているのか、全くわからなかった。



