それから、父さんと母さんはわかりやすく千果ばかりを甘やかすようになった。
両親の過剰な愛が千果に注がれる一方で、俺のことは放任主義になった。
寂しかった。
平等に愛してほしかった。
千果が、羨ましかった。
『おにいちゃん、いっしょにあそぼう?』
『……っ』
可愛かったはずの妹が、俺を「にーちゃ」ではなく「おにいちゃん」と呼べるようになったことさえも妬ましくて、俺はつい無視してしまった。
父さんと母さんにかまってもらえばいいだろ。
一種の反抗期だった。
俺はどんどん千果に冷たくなっていった。
その度に、父さんと母さんが俺を叱る。
不平不満をぼやけば、『言い訳はやめろ』と聞く耳を持ってはくれなかった。
俺の居場所がなくなっていくようで、怖かった。



