俺は幼稚園での生活に慣れてきて、自然と千果と遊ぶ時間が削られていった。
それに比例して、千果が1人で本を読む時間が増えた。
『お母さんが読んであげようか?』
『いーやっ』
母さんと父さんが幾度そう聞いても、千果は決して望まなかった。
その時にはすでに、千果の「大好きランキング」では俺がぶっちぎりのトップだった。
『にーちゃじゃなきゃ、やらっ!』
千果はずっと俺を待っていてくれていたのに、俺は幼稚園でできた友達と遊ぶことを優先し、千果を放っておいた。
俺の「大好きランキング」は日によって順位が大きく左右される、気分屋なものだったんだ。
家に帰ってきても、俺は本を読んであげるより、戦隊もののアニメが観たがった。
『にーちゃ、おかえいなしゃい!』
『ただいま』
『にーちゃ、にーちゃ!』
『なんだよ』
『ほん、よんで!』
『いやだ!じぶんでよめよ!』
初めて千果のお願いを断った日は、千果に大号泣されて、両親に怒られた。



