俺に懐いている千果が、とにかく可愛かった。
俺は妹に好かれてる、すげぇ兄貴なんだ。
そんなプライドが芽生えていた。
俺のそばまでやってきた千果に、俺はニッと笑う。
『ちか、おれがほんをよんでやるよ!』
見栄を張って、絵本ではなく、千果には難しめの動物図鑑を選んだ。
動物図鑑をどう読み聞かせたのかは、記憶にない。
『きりんしゃん!』
『くびがながいな』
『ながーい!』
キリンの写真が載ってるページを見て、俺と千果は楽しんでいた。
1歳にしては言葉の発達がやけに早く、理解力に長けていることを、気にも留めないで。
その日以降、千果に本を読んであげることが多くなった。
千果が『にーちゃ!よんで、よんで!』と毎日お願いしてきたからだ。
頼られて純粋に嬉しかった。
俺は毎日読んだ。
不思議と、面倒くさいとか退屈だとか思わなかった。



